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2018.01.17 事業報告 

ESD研究会(北陸) 「ESD研究会~SDGsと企業」が行われました

◆北陸地域ESD研究会「SDGsと企業」報告

 

日 時:平成29年12月20日(水) 9:30~12:30

会 場:金沢勤労者プラザ 405研修室
参加者:25名
主 催:中部地方ESD活動支援センター

 

中部地方ESD活動支援センター主催の北陸で初めての「ESD研究会」を行いました。今回は主に企業を対象とした「SDGsと企業」がテーマです。金沢青年会議所をはじめ、北陸で活躍する企業の方々のほか、NPOや大学の教員の方に参加いただき、北陸の2社の企業の取り組みとSDGsの関連性、北陸で企業を対象にSDGsに取り組んでいる専門家等を招いて、熱い議論が交わされました。

 

<プログラム>

●講義 「SDGsと企業」
講師:戸成 司朗氏(住友理工株式会社 CSR部長)
.     平本 督太郎氏(金沢工業大学経営情報学科 講師)
●事業事例紹介 「企業が取り組むSDGs」
ゲスト:村田 康博氏(YKK株式会社 環境・安全部部長)
.         清川 卓二氏(清川メッキ工業株式会社 専務取締役)
●セッション 「SDGsが企業の羅針盤となるために」
アドバイザー:戸成 司朗氏(住友理工株式会社 CSR部長)
.         平本 督太郎氏(金沢工業大学経営情報学科 講師)

 

まず、中部地方ESD活動支援企画運営会議委員でもある住友理工(株) CSR部長 戸成司朗氏、金沢工業大学経営情報学科講師 平本督太郎氏に、SDGs達成に向けた企業の役割や動きついてお話いただきました。

 

「企業向けのSDGs調査によると、世界のグローバル企業の92%がSDGsを認知し、71%は既に行動を開始しています。なぜこれほどまでに企業が国連の課題に取り組んでいるのでしょうか。」

戸成氏からの問題提起です。その後、SDGsに取り組む理由となる「リスク」と「機会」について、企業が正しくSDGsを理解することの重要性について、社会的ニーズから事業目標を設定する「アウトサイド・イン・アプローチ」について、等の説明がありました。その後、自社の取組として、ビジネスモデルについての議論など経営層によるトップダウンのアプローチと、社員ひとりひとりが「自分の目標」を設定し当事者として取り組むボトムアップのアプローチを並行して実践されていることが紹介されました。最後に、すべての企業の経営者に「持続可能な社会づくりへの責任」があり、SDGsの目標達成を目指した経営者になることが求められていること、そしてそのための道しるべを説かれました。

 

平本氏からは、現在の経済状況から、消費者が何を求めているかについて、SDGsビジネスを実践している企業の事例紹介、持続可能な社会を担う企業のありかたについてお話いただきました。

海外、国内のデータから、消費者のSDGs消費、エシカル消費への関心が高まっており、「高品質で費用対効果が高い商品やサービス」「顧客への提供価値が高くSDGsにも貢献できる商品やサービス」が求められ、これまでの「OR」ではなく、「AND」による複合化したSDGsマーケットの創出へと変化している、企業がその変化に対応するためには、既存の枠組みの「改善」ではなく、前提条件を変え、あるべき姿を描いてその達成のための「再構築」が必要である、との説明がありました。
その後、実践をすでにしているSDGs ビジネスアワード受賞企業のフロムファーイースト(株)や、ANAホールディングス(株)のAVATAR Programの取組みが紹介されました。
まずは既存の取り組みをSDGsに紐づけること、さらに「未来はどうあるべきか」を描き、自社の取組みの再構築、社会への提供価値の再認識をする。SDGsビジネスは究極の顧客志向追求型ビジネスであり、地方の企業がこれまで追求してきたことを世界に広げることが今後必要になってくる、と指摘されました。


続いて、YKK(株)の村田康博氏、清川メッキ工業(株)の清川卓二氏に、自社の取組を紹介していただきました。

 

YKK(株)では創業以来、YKK精神「善の巡環」(他人の利益を図らずして自らの繁栄はない、という考え方)を全ての活動の根幹として、そして経営理念「更なるCORPORATE VALUEを求めて」の実践を通して、本業を通じた持続可能な社会への貢献に取り組んでいます。71の国と地域で事業を展開し、「技術の総本山」としてグループ最大の製造・開発の中核拠点である黒部事業所では、工場内に「黒部川扇状地の森づくり」による生態系の保全や、子ども達への環境教育プログラムを実施しています。

また、社宅跡地の再開発として、自然エネルギーを最大限に活用した次世代集合住宅「パッシブタウン」を整備し、21世紀の新しいまちづくり・住まいづくりに取り組んでいます。パッシブタウンは、本社機能の一部を東京から移転することで黒部に異動することになった社員や家族の住まいとして、また多様な文化・宗教の外国籍社員への充実したサポートも提供しています。仕事のために住むだけではなく、「黒部に来てよかった!」と思ってもらえるように環境にも人にも優しい空間・まちを目指して活動を進めています。
SDGsを新しい概念として捉えるのではなく、YKK精神・経営理念に基づき、当社の強みを活かしながら実践している取り組みがSDGs目標にもつながっています。SDGsとの関連性については、今後、活動を整理し、SDGsのアイコンを活用した会社内外へのアプローチ方法なども進めたい、と話されました。

 

清川メッキ工業(株)の経営理念は「自由なる創意の結果が、大いなる未来を拓く」、めっき加工を通して安心安全で心豊かで便利な生活をつくることをミッションとしています。

お客様の課題や困りごとをニーズとし、営業部をもたず「飛び込まれ営業」で事業を展開することで、日々新しい技術やサービスを開拓しています。また、めっき業界初のISO取得し、取得に関する情報公開や業界向けの講演会などを行うことで、業界全体の品質向上、環境改善を目指すなど、経営面、理念面において様々な“自由なる創意”に基づいた企業活動を行っています。
人材育成の面においては、社員が、子ども向けのめっき教室を行い、子ども達に自身の仕事の誇りを伝えることで、社員も仕事に誇りを持つようになり、地域との交流を生み出し、地域活動の展開、質の高い人材の創出など多様な活動につなげています。このような活動を通して、「人材」ではなく企業の財産となる「人財」を育成する、という独自の教育が大きな特徴です。
清川メッキ工業(株)の経営は「人財」「実業」「理念」をバランスよく組み合わせ、地域社会の中で活躍する社員、人財を生み出しています。これらの活動がESD、SDGsにつながるのでは、と清川氏は話されました。


左:清川卓二氏(清川メッキ工業(株)) 右:村田康博氏(YKK(株))

 

その後のセッションでは3グループに分かれ、「講義、事例紹介で気付いたこと」「自社の取組とのつながり」について議論し、SDGsへの理解、取組方法の検討を深めました。

 

参加者からは、「研究会に参加するまでどうやってSDGsに取り組んだら良いか分からなかったが、講義やセッションの中で理解でき、取り組みへのハードルが下がった。今日の話をもとにSDGsを周りに伝えていきたい。」「同じ悩みをもつ企業 同士で情報共有を行い、新たなつながりを生むことができた。」「事業活動を通じて社会貢献につながっていくことをどのように社員へ浸透させたらよいかを学んだ。」などの、熱い想い、コメントがありました。

今回の研究会の学びのポイントは3つあります。

①SDGsのマークは世界の共通言語であり、まずは自社の取組にマークを付けることから始めることからはじめる。
②「地域・社員」というキーワードがどの事例においてもキーワードであった。SDGsは国際的な目標ではあるが、
地域や社員に目を向けて目標をどう実現していくかを考える。
③不可能なことを可能にするプロセスをどう作っていくか、「ORからANDへ」「改善ではなく再構築・イノベーション」への知恵の持ち寄りが重要であり、2030年までの挑みである。日本型・地域型でどう作っていくかが面白みでもある。

 

北陸地域では、金沢青年会議所など企業が既にSDGs達成に向けた取り組みを始めており、モチベーションがあります。そのモチベーションを東海、長野の青年会議所や商工会議所、企業に伝え、学びあう相互参照の場の大切さを実感しました。「SDGsを北陸から推進していこう!」という、将来に向けた意気込みを感じた研究会でした。

 

今後のセンター主催のイベントは、ESD交流会を、1月19日(金)名古屋市内、2月23日(金)金沢市内にて開催します。また、3月3日(土)には名古屋市内にて地域フォーラムを開催します。ご期待ください!

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